

麻木
本日は「スーパードライ」などのヒット商品でおなじみのアサヒビールさんにお伺いしました。ビール売り上げ国内No.1※を誇るトップメーカーとして知られていますが、最近ではそれ以外の分野でもいろいろな商品を出されていますね。
※
2006年ビール出荷高:
「日本マーケットシェア事典」2008年度版 矢野研究所調べ
奥山
おかげさまでビールについては堅調で、1998年にトップシェアを獲得して以来、ずっと売上No.1を維持し続けています。さらに2001年には、ニッカウヰスキーの営業部門を統合、2002年に協和発酵、旭化成などの酒類部門を統合し、ビール単体から総合酒類事業へとビジネス領域を拡大しました。
現在ではビール、発泡酒に加えて、ウイスキー、焼酎、ワインなど、幅広い分野の商品を取り扱っています。また、アサヒビールグループ全体では、アサヒ飲料や和光堂をはじめとする企業が、清涼飲料水や缶コーヒー、ベビーフードなどの商品をご提供しています。
麻木
赤ちゃんから大人まで、すべての年齢層向けの商品を取り揃えているわけですね。実は私も、糖質ゼロに惹かれて「スタイルフリー」を愛飲させて頂いているのですが、今ですとオススメの新製品は何ですか。
奥山
いろいろありますが、3月に新発売された「クリアアサヒ」は、ぜひ一度お試しください。これは、第三のビールと呼ばれる低価格帯の商品ですが、スーパードライに限りなく近い製法を採用しており、お客さまからも高いご評価を頂いています。今後は味や品質はもちろん、価格面でもご満足頂ける商品をご提供していきたいですね。
麻木
それは一消費者としても嬉しい限りです。でも、安くて高品質な商品を提供するとなると、メーカーとしては大変な面もあるのではないですか。

奥山
原油価格や原材料費なども高騰していますので、アサヒビールグループとしても効率化・コスト削減をさらに追求しなくてはなりません。従来の延長線上ではなく、大胆な発想に基づく取り組みが必要と考えています。
麻木
今回、生産管理システムと原価計算システムを再構築したと伺いましたが、それもそうした取り組みの一貫なのですか。
奥山
その通りです。アサヒビールグループでは製造部門の情報一元化を目指した「トータルプロダクションシステム」の構築を進めるとともに、環境対応や品質管理のグループ統一指針である「Asahi Way」を掲げ、品質保証や安心・安全を確保する仕組みなどを作り上げてきました。これと同時に課題になったのが、様々な商品を生産するモノづくりの仕組みです。
現在アサヒビールグループでは、9ヵ所のビール工場にニッカウヰスキーの7工場を加えた全16工場を稼働させています。しかし、これまではビール工場はビール、焼酎工場は焼酎といった具合に、単独の商品のみを製造してきました。このため生産業務のプロセスや考え方が、アサヒビール、ニッカウヰスキーの両工場でそれぞれ異なっていたのです。
効率化やコスト削減をさらに推進するためには、一つの工場でいろいろな商品が生産できる「ハイブリッド工場化」を目指すことが望ましい。また、グループ内に2系統の業務プロセスが存在していると、先に述べた「Asahi Way」を生産分野で確立することが困難になります。そこで、生産業務の中核を担う生産管理システムと原価計算システムを統合・再構築し、グループ全体での業務プロセス改革を目指したのです。


麻木
アサヒビールもニッカウヰスキーもお酒のメーカーなのに、業務プロセスには違いがあるものなのですね。
岡田
たとえば、ビールは仕込みから数十日間で製品ができあがりますが、高級ウイスキーだと樽に詰めてから数十年間貯蔵することもあります。
また、ビールは1分間あたり1,500本製造して、3日以内に出荷しますが、他のお酒だとなかなかここまでのスピードは要求されません。商品の特性が全く異なるので、どうしても生産に対する考え方も違ってくるのです。このため、同じグループ内でありながら、話がなかなか噛み合わない場面もありました。
麻木
なるほど。数十日と数十年では確かに相当な差がありますね。プロジェクトを進めていく上では、どのような点がポイントになったのでしょう。
岡田
生産管理システムについては、「酒税法に則った帳簿記帳義務を満たすこと」「ビール・ウイスキー・焼酎など、あらゆる酒類、ソフトドリンクの製造に対応できる汎用的な仕組みであること」「アサヒビール、ニッカウヰスキー両社での原材料の一括購買に対応できること」の3点をポイントとしました。
工夫した点は、従来のように製造工程を意識してシステムを構築するのではなく、必要に応じて自由に工程を変更できるようにした点です。また、一点目の酒税法についても、もし国税当局に提出した帳票に間違いがあると、酒税法の記帳義務を満たしていないことになるため、絶対にミスが起きないよう注意しました。
麻木
酒税法という法律に基づいた正しい記帳をしなければならないということですね。それではミスは許されませんね。原価計算システムについてはどうですか。
齋藤
生産管理システムと同じく「あらゆる酒類、ソフトドリンクの製造に対応できること」、それに「製造列別・最小製品別の原価計算が行えること」「実績・予算・決算見込みなどのシミュレーションが行えること」「データ加工が自由に行えること」の3点をポイントとしました。
たとえば従来は、何かのキャンペーンでコラボ商品を作ったとしても、「スーパードライ」といった商品単位でしか原価を把握できませんでした。これをもっと詳細な単位(例えば阪神タイガース缶などのコラボ商品)で、よりきめ細かく詳細な原価分析ができるようにしたかったのです。また、グループ内での比較が行えるよう、原価計算に対する考え方も統一して見える化を図りました。
麻木
今回のパートナーに富士通を選ばれた理由は何だったのでしょう。
齋藤
酒税業務には、アルコールの度数や製造時の温度が関わってくるなど、特殊な面があります。このため法令を理解していないベンダーだと、最適なシステムを構築することは難しいのです。その点、富士通には酒税業務への対応経験がありましたので、安心して構築を任せられました。また、生産管理業務や原価管理業務に精通していること、総合力の高さなども決め手となりました。

初めてのベンダーにシステム構築を依頼する際には、うまくコミュニケーションが図れない点がしばしば問題になります。
今回のプロジェクトでも、初期にはそうした懸念があったとのことです。「しかし、富士通スタッフが真摯に取り組んでくれたおかげで、意思疎通もだんだんスムーズに。最終的には全員が一体感を持って構築に取り組めました。これは非常にありがたかったですね」と岡田氏。また、齋藤氏も「システムだけでなく、業務にも精通したスタッフを揃えてくれたことも助かりました。提案の内容なども的確で、我々も驚いたほどです」と語ります。
おそらくメンバーの誰一人欠けても、今回の再構築を成功させることは難しかったことでしょう。奥山氏はプロジェクトを総括して「ユーザー企業にとって、新しいベンダーを採用するのはある意味『賭け』でもありますが、今回は富士通スタッフの『人柄』を信じて大成功でした」と語って下さいました。
麻木
実際に構築されたシステムの概要について教えて頂けますか。
齋藤
まず、原価計算システムには、富士通のパッケージ「GLOVIA/Process C1」を採用しました。この製品は、非常に汎用的な使い方ができる設計になっており、大きなカスタマイズを加えることなく新しい業務プロセスを構築できます。
また当社では、原料などの調達時に実際にかかった費用を原価として割り振る「実際原価」を採用していますが、この実際原価による原価管理機能をサポートするなど、機能面も充実していました。製品を紹介して頂いた時に、まさに一目惚れしてしまいましたね。
また、生産管理システムは、先に挙げた酒税業務の特殊性もそうですし、ビールメーカーもそう数があるわけではないので、最初からパッケージの採用は考えませんでした。こちらはアプリケーションサーバ「Interstage Application Server」と富士通が提供する「食品フレームワーク」を採用し、独自開発しました。独自開発の場合には、しばしば開発期間やコストの増大が問題になりますが、「食品フレームワーク」を活用することで、短期間で効率的な開発が実現できました。


麻木
新システムの導入効果についてはいかがでしょう。
岡田
本格的なコスト削減効果が現れるのはこれからですが、業務面では既に様々なメリットが得られています。
たとえば、以前はアサヒビール、ニッカウヰスキー、旧アサヒ協和酒類製造の3社でマスタコードがバラバラであり、同じ原材料の在庫をチェックするにも3つのシステムを参照しないといけませんでした。それが現在では、16工場のデータがすべて一元管理されているため、グループ全体の最新在庫情報を簡単に参照できます。
また、生産管理システムに入力したデータを、原価計算システムや経理システムなどに連携することで、データの重複入力も不要になりました。原材料・半製品・製品の廃棄ロスも大幅に削減できる見込みです。また原材料の調達についても、よりロスの少ない形での運用が実現できると見込んでいます。
齋藤
原価計算システムについても、工場の製造列単位、最小製品単位での製造原価計算が行えるようになりましたので、今後の原価低減活動に大きく寄与できるものと考えています。
また、もう一つの効果として、新商品の生産を開始する際のシステム対応が大幅にスピードアップできた点も大きいですね。旧システムはビールの製造工程を前提として作られており、仕込・発酵・貯酒・濾過・瓶(缶)詰めという固定された順番でしか入力が行えませんでした。このためビール以外の新商品が出るたびに、その都度2~3ヵ月掛けてシステムを改修していたのです。
しかし今回のシステムでは、マスタ制御による汎用的な仕組みを構築しましたので、1~2日あればシステム対応が行えます。しかもビールだけでなく、他の酒類や清涼飲料の生産にも対応が可能。ハイブリッド工場にもスムーズに対応する上で、こうした環境が整備できた意義は大きいですね。
麻木
2~3ヵ月が1~2日に短縮されたんですか!それは凄いですね。大規模プロジェクトだけに、システム構築の過程では、いろいろとご苦労もあったのではないですか。


武田
今回の仕組みには20強のシステムが関係していますが、そのうちの半分近くを再構築、または大掛かりな改修を加えています。しかもシステム間でデータをやりとりするインターフェースが250以上あったため、本番稼働前のテストは大変でした。
生産管理システムと原価計算システムは生産系システムの中核であるだけに、かなりの神経を使いました。特に原価計算システムは、他のシステムからデータを受け取る関係上、テストの順番が最後になります。このため原価担当の方々には、多大なご苦労をお掛けしました。
しかし、こうした中でも、スケジュール通りにシステムを本番稼働させることができたのは、お客様の責任者の理解と事務局メンバー、富士通スタッフ、弊社現場を含めたメンバー全員が思いを一つにして頑張れたからではないかと思います。
高橋
原価計算システムは、以前よりきめ細かく情報を管理するため、各システムから従来よりも詳細なデータを取り込んでいます。これにより、データ量が以前の約1,000倍近くに増えました。
もっとも、データ量が1,000倍に増えたからといって、決算早期化などの観点から原価計算に掛かる時間を延ばすことはできません。月締めのバッチ処理を、以前と同じ4時間で行わないといけないわけです。ところが、開発初期にテストしたところ、なんと24時間も掛かってしまいました(苦笑)。
それから処理順序の改善やロジック、データベースのチューニングを重ねて4時間に短縮しましたが、そこは今回非常に苦労しましたね。



宮澤
今回の開発メンバーは総勢約180人に上ります。かなりの人数であることは確かですが、開発期間が限られているだけに、お互いに気持ちを一つにして助け合って作業に取り組むことが求められました。メンバー全員がこうした点を理解し、一致団結してプロジェクトの成功に貢献できたのは嬉しかったですね。
また短期構築を実現する上では、食品フレームワークの部品も大いに役立ちました。たとえば、在庫・受払・伝票のトランザクションの整合性を保つための処理などを一から開発していたら、もっと時間が掛かっていたことでしょう。
飯沼
富士通を信頼してお任せ頂いたわけですから、担当営業としてもご期待に応えるべく全力で取り組みました。アサヒビール様としても、当社とのお付き合いは今回が初めてなので、最初は不安を抱かれた部分もあったのではないかと思います。
しかしエンジニア陣が奮闘してくれたおかげもあり、プロジェクトを無事に完遂できて本当に良かったと感じています。当社はハード、ソフト、ソリューションをトータルにご提供できる数少ない国産ベンダーですので、今後は生産業務以外の分野でも様々なご提案をさせて頂ればと考えています。

麻木
グループの事業展開を支える新たな仕組みが完成したわけですが、今後はどのようにシステムを活用していかれますか。
奥山
グループ全社が同じ基準、同じ尺度に基づいて生産に取り組めるようになりましたので、今後はその効果をさらに発揮できるよう務めていきたい。
特に昨今のように原材料費の高騰が続く中では、在庫やロスが減る、原価を精緻に管理できるということは非常に大きなメリットになります。当社の競争力の源泉となるシステムとして、積極的に活用していきたいですね。
麻木
今後も魅力的な商品が生まれてくることを、私も楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。
GLOVIA/Process C1は、プロセス産業に不可欠な機能を集約した基幹業務パッケージです。一歩進んだ経営管理や生産管理、業務プロセスの最適化を実現します。特に、標準原価計算だけでなく、実際原価計算にも対応した「原価管理モジュール」は、さまざまなビジネスで広く活躍。精緻な原価管理と多彩なシミュレーションで経営に貢献します。
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