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麻木
本日はYKK株式会社・ファスニング事業本部さんにお邪魔しました。YKKと言えばファスナー、ファスナーと言えばYKKというくらい、この分野の代名詞的な企業ですよね。私も一日に一度は、必ずYKKさんの製品に触れているような気がします。
川上
ありがとうございます。実は当社では「YKK」ロゴが入ったファスナーだけでなく、国内外のファッションブランド向けの特注品なども作っています。おそらく、そうとは気付かないうちに、当社製品をご利用頂いていることも多いのではないでしょうか。
麻木
海外のブランド商品にも採用されるとは、さすがはファスナーのトップメーカーですね。ところでYKKさんでは、企業精神として「善の巡環」という言葉を掲げているそうですが、これは一体どういうものなのですか。
川上
これは当社の創業者・吉田忠雄が、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」との言葉に、感銘を受けたことに由来しています。事業の成果を取引先様やお客様と分かち合って皆様に発展して頂ければ、自然に我々のビジネスも繁栄する、そういう考え方ですね。これを企業経営の中で実践するために掲げたのが、YKK精神である「善の巡環」なのです。

麻木
なるほど!企業が成長していくためには、自分のことばかり考えていてはダメだというわけですね。CSR(企業の社会的責任)活動にも積極的に取り組んでいると伺いましたが、具体的にはどのような取り組みをなさっているのですか。
川上
たとえば「QCD+E」という活動を推進しています。まず「QCD(Quality・Cost・Delivery)」については、「現地主義」と「品質至上主義」の2点に取り組んでいます。一般に製造業では、生産・労働コストの削減を狙って海外進出を行うケースがほとんどです。しかし当社の海外進出パターンは、基本的に二種類に分けられます。一つ目は、お客様の海外進出に合わせて進出するケース。もう一つは、海外の現地産業からの要望に応えて進出するケースです。特に後者の場合は、現地産業の発展に寄与することが大きな目的ですので、私も海外赴任の時には先代社長から「現地の土地っ子になって貢献してこい」と強く言われました。
品質至上主義については基本中の基本ですね。実はファスナー規格というのは世界中バラバラで、国ごとに少しずつ基準が異なります。もっとも、事業をグローバル展開しているお客様などは個別に対応していられませんから、各国規格よりも高いレベルのお客様スタンダードが作られています。我々としてもこれに対応すべく、ファスナーの製造機械を自社で設計・開発するなどの取り組みを行い、お客様からの品質要求にお応えしています。
麻木
そして「+E」の「E」は、エコロジーですね。
川上
その通りです。これからの製造業にとって、環境問題は非常に重要な課題です。当社でも1994年に環境宣言を打ち出し、環境報告レポートを毎年公開するなどの取り組みを行ってきました。製品としても、ペットボトルなどの再生材を使った「ナチュロン®」や、生分解性素材を使った「リアース™」などの製品を開発・販売しています。「QCD+E」における活動でも、グローバルな基準で環境対応を行い、それを世界中の拠点に展開する取り組みを進めています。
麻木
環境対応ということでは、今回「グリーン調達管理システム」を新たに構築されたと伺いました。これはどのような理由があったのですか。
川上
環境経営はいまや世界中の企業のテーマです。現在積極的に取り組んでいるのは地球環境への負荷が少ない材料だけを仕入れる「グリーン調達」です。
グリーン調達を実践するためには、素材から塗料に至るまで、あらゆる原材料、副材料に含まれる化学物質をすべて把握しておく必要があります。数万アイテムにものぼるファスナー製品 を製造している当社にとって、膨大な化学物質情報の調査と把握、そして管理はとても大きな課題でした。 同時に環境への配慮から欧州におけるRoHS指令やELV指令をはじめとして、含有化学物質に関する規制が年々強まっています。世界展開する当社にとって、化学物質情報管 理に基づくグリーン調達の推進は避けて通れない使命でもありました。
そこで当社に原材料を納入している仕入先企業にもご協力を頂き、化学物質の利用状況が把握・管理できるシステムを構築することにしました。

麻木
ファスナーを見ていると、そんなにいろいろな化学物質が含まれているようには見えないのですが…。
川上
それが意外とそうでもないのです。ファスナーは繊維と金属、あるいは繊維と樹脂といった具合に、異種材の組み合わせでできています。しかも色を付けるための染料、塗料や光沢を出すためのメッキなど、様々な表面処理も施されています。当然こうした処理には化学物質が使われますから、見た目から受ける印象以上に、いろいろな物質が含まれているのです。
坂田
しかも、塗装に使われる製品の色の数だけでも約6000色、製品のアイテム数は10万種類にも上ります。更にサイズ(長さ)を組み合わせると膨大な数になり、1製品に含まれる化学物質を、人手だけで管理するのはとてもムリですので、システム化が不可欠となったわけです。

麻木
実際にはどのような形でシステムを構築されたのですか。
坂田
現代の製造業では、ものづくりに関わるデータを一元管理するために一般的にPDM(Product Data Management)と呼ばれるシステムを活用しています。当社でも自社開発のPDMがありますので、ここに登録された製造用のBOM(Bill Of Materials:部品表)データと、仕入先企業百数十社から提供された約1500品目の化学物質データを紐付け、「環境部品表データベース(環境BOM)」を作成しました。
製造BOMでは、一つの製品に使われる部品や材料がツリー状に管理されていますが、環境BOMではさらに塗料、染料、メッキなどの副資材の情報も管理できます。このため、「何色のどの製品にはどういう化学物質が使われているか」といったことが、迅速に確認できるようになりました。従来は手作業で行なっていた化学物質情報管理を大幅に効率化できましたし、グリーン調達とともにお客様への厳格な品質保証が可能になりました。
麻木
今回のパートナーに、富士通を選ばれた理由は何だったのでしょう。
野坂
候補として挙げた約10社のベンダーから、最終的に富士通1社に絞り込んだわけですが、決め手の一つはコンサルティング力です。他のベンダーは提案ごとに内容のバラつきがありましたが、富士通は2回目、3回目と提案を重ねるに従って、我々の要望に近づいてきてくれました。また、営業とSEが、熱意を持って積極的に取り組んでくれたことも高く評価しました。
坂田
少し難しい話になりますが、ダイナミックな環境BOM構築がポイントでした。染料など色ごとに化学物質含量が異なる為、管理対象がアイテムと色で6億通りもの組み合わせになります。このマスタをシンプル運用し、含有量計算実現に最も具体的な提案を戴きました。また、システムを構築すると業務がどう変わるか、どういう効果があるかといったことを、クリアーにイメージさせてくれたことも良かったですね。今回はシステムの中核となるソフトウェアに、富士通長野システムエンジニアリングの「PLEMIA/ECODUCE(プレミア・エコデュース)」を採用していますが、この製品も実際の業務の流れをしっかりと踏まえた使いやすいパッケージです。このため、問い合わせ受付から回答に至るまでの業務フローを、スムーズに進められるようになりました。また、システムのプラットフォームとして導入した「PRIMERGY」の性能、信頼性についても、大いに満足しています。

麻木
グリーン調達管理システムを構築した効果はいかがでしたか。
野坂
製品のアイテム数、色数、長さの組み合せで膨大な数にのぼる各製品に含まれる化学物質情報を厳密に管理できるようになりました。同時に、お客様からのお問い合わせ対応のスピードが、これまでに比べて格段に向上しました。先にも述べた通り、従来は検査機関での分析作業などが必要でしたが、現在ではシステムに蓄積された原材料データを調べるだけで回答できるケースがかなり増えています。お問い合わせの内容によって多少の違いはありますが、今まで約20日掛かっていた回答期間が、現時点では半分の10日前後に短縮。最終的には、さらに5日前後にまで短縮できると見込んでいます。お客様からのお問い合わせ件数は、国内だけでも年間300~400件ありますので、これは非常に大きなメリットですね。
麻木
それはすごい!回答がすぐに返ってくるということは、メーカーとしての信頼感にもつながりますよね。いくら待っても一向に返事が来ないような企業だと、お客様も安心して取引できないでしょうし。今後はどのような展開を考えられているのですか。
坂田
国内向けの環境は順調に稼働していますので、今後はグローバル展開がテーマとなります。世界70ヵ国/地域 119社の拠点をカバーすべくグリーン調達管理システムを順次展開し、環境対応のグローバル化を進めていきます。
当社自身グローバル製造業ですので、国境を越えて原材料の調達や製造を行っています。たとえばインドネシアで調達した部品をYKKインドネシアが加工し、中国にあるYKKを経て日本のYKKで製品に仕上げるといった具合ですね。従って、化学物質についてのデータをグローバルに一元管理できないと、システムが本当に完成したとは言えないのです。
そういう意味ではまだまだ道半ばですが、もともと当社では、1988年からグローバル標準の基幹システム開発を進めており、製品コードなどマスタ体系の統一も行っています。今回のシステムもこうして常に標準化をキーワードに築き上げてきた基幹システムがあるからこそ、世界展開が可能になります。今のところ2009年末頃には、主要な各国/地域への展開作業を終える見通しです。
麻木
エコロジーへの取り組みは、まだまだ続いていくというわけですね。
川上
そういうことです。品質向上はもちろんですが、環境対応についても、全世界のYKKグループ企業が一丸となって取り組んでいきます。生産活動、サービス、製品のあらゆる面において、より高いレベルを追求していきたいですね。
麻木
それは素晴らしい。YKKさんがトップ企業であり続けている理由が、何だか分かったような気がします。本日はどうもありがとうございました。
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