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対談 スコットランド公立トッドホーム小学校 [顧客満足度向上]

背景学校給食の改善に取り組まれた理由は何だったのでしょう。

経緯手のひら静脈認証による決済システムは、どのようにして実現されたのでしょう。

展望新システムはどのようなメリットをもたらしたのでしょうか。

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学校給食の改善に取り組まれた理由は
何だったのでしょう。


麻木久仁子

麻木

高いセキュリティと確実な本人認証を実現するテクノロジーとして、注目を集めているのが生体認証技術です。ところがこの最先端技術を、小学校の学校給食に活用している事例があるそうです。本日はその内容を探るべく、プロジェクトに携わった富士通のスタッフにお話を伺います。

さて、今回の導入先は、スコットランドの公立トッドホーム小学校とのことですが、スコットランドの給食制度はどうなっているのでしょうか。日本で学校給食と言えば、全員が揃って同じものを食べるというイメージですが…。



阿部

スコットランドに限らず、英国の学校給食はビュッフェ・スタイルが一般的です。いろいろな料理が並んでいて、その中から自分が好きなものを選びます。当然給食費も日本のように一律ではなく、食べた分をその都度決済する形になります。



麻木

へえ!それはまたずいぶん日本の給食の風景と違いますね。メニューにはどんなものがあるのでしょう。



阿部

結構バラエティに富んでいますよ。その中でも子供たちに人気があるのは、やはりピザやスパゲッティ、ハンバーグといった料理ですね。もちろん英国料理の定番であるフィッシュ&チップスも並んでいます。



阿部 明 富士通 株式会社 EMEA総代表室

麻木

デザートもあるんですか?



阿部

はい。ケーキやプディングなどがありますし、コーラやジュースも注文できます。

麻木

それは何だかうらやましいですね。日本だと栄養士さんがバランスやカロリーを考えたメニューを作って、それをみんなで食べますが、英国では自分が好きなものを好きなだけ食べられると。



麻木久仁子

阿部

ところが、あまり喜んでばかりもいられないのです。子供たちが自分の好きなものばかり選んでいくと、どうしても栄養が偏りがちになります。その結果肥満などの問題が生じてきたのです。スコットランド政府としても、学校給食が肥満の原因となるようではいけないと考えました。

そこで始まったのが、学校給食の改善を通じて子供たちの健康と福祉の向上を図る「Hungry for Success」という活動です。現在では従来の方式を改め、メニューを何パターンかのセットメニューに分けて、バランスの良い食事を提供するようになっています。



麻木

なるほど!確かに自分で好きなものを選べるとなると、野菜や魚は避けたりしますからね。でも今回のテーマである生体認証とは、どこで結びつくのでしょう?



阿部

実は「Hungry for Success」には、もう一つ重要な課題がありました。中には経済的な事情などで、給食費の補助を受けている子供たちもいます。従来はこうした子供たちについては、食券の色が違っていたり、並ぶ列が別だったりしていたのです。これでは補助を受けていることがあからさまに分かりますから、子供たちにとっても抵抗感があります。補助を受けていることを知られたくないために、無料の食券をムダにしていたケースもあったそうです。

学校という教育の場で、子供に心理的な負担を掛けるようなことがあるのはやはり問題です。そこで、決済の際にこうした違いが分からないよう、キャッシュレス決済システムと電子的な本人認証装置を導入することにしたのです。しかも生体認証なら、カードなどのように落としたりなくしたりする心配もありません。

麻木

みんなが同じ列で食事を受け取るけれど、認証や決済処理はシステムが自動的に行ってくれるというわけですね。給食の時は、何も気兼ねせずにおいしく食べたいですものね。






手のひら静脈認証によるキャッシュレス決済システムを、
どのようにして実現されたのでしょう。


阿部 明 富士通 株式会社 EMEA総代表室

麻木

そもそも、スコットランドの小学校のシステム構築に関わることになったのは、どういう経緯からだったのですか。



阿部

今回のシステム構築を直接手がけたのは、Yarg Biometrics社というスコットランドの現地企業です。同社では今回の事例に先立って、別の小学校でキャッシュレス決済システムの試験導入を行っていましたが、その結果があまり良くなかったそうです。というのも、その際に使っていたのは指紋認証装置だったのです。

スコットランドといえばラグビーやサッカーが大人気ですから、指にケガをしたり指紋がすり減ってしまったりする子供も少なくありません。このため期待したような認証率が実現できませんでした。そこでYarg社では指紋認証に変わる生体認証装置を探していたのですが、ある展示会で富士通の手のひら静脈認証ソリューション「Palm Secure」に注目されました。手のひら静脈認証なら、指にケガをしたり指紋がすり減っていても問題なく認証が行えます。これは要件にピッタリだということで、当社に協力依頼があったというわけです。

 



麻木 久仁子

麻木

でも生体認証というと、一般的には施設への入退室管理や金融機関などで利用されることが多いですよね。小学校の給食と聞いて、かなり驚かれたのではないですか。



阿部

まったくその通りで、最初は「どうして学校給食に手のひら静脈認証?」と面食らいました(笑)。でも事情を聞いてみると、「Hungry for Success」の話も含めて、非常に重要な問題であることが分かりました。そこで当社としても、今回のシステム構築に協力することにしたのです。



麻木

手のひら静脈認証ならではのメリットには、どのようなものがあるのですか。



若林

生体認証には指紋認証や虹彩認証などもありますが、指紋認証についてはいま出たような理由で今回は採用が困難でした。また虹彩認証は、目という人体の中でも比較的弱い部位で認証を行いますから、子供向けのシステムとしてはややリスクが高い。その点、手のひら静脈認証なら、子供でも安全に認証が行えます。

また静脈認証の中にも、手のひら、手の甲、指先など、いろいろな方法がありますが、手の甲の場合は静脈の数が少ない、指先の場合は血管が細くて認識が難しいなどの問題があります。ここでも手のひらなら、精度の高い認証が安定的に行えます。



若林 晃 富士通 株式会社 ビジネスインキュベーション本部 開発部(バイオメトリクス認証担当)

阿部

指紋認証については、保護者の方々の同意を得にくい点も問題でした。犯罪捜査などを連想するため、どうしても抵抗感を感じるようです。その点、手のひら静脈認証には、そういうマイナスイメージがない点も幸いしました。



麻木

システム構築で苦労された点などはありましたか。



若林

やはり子供を対象としたシステムであるという点です。マンションの入退室管理用などで、一部子供を対象としたシステムの経験はあるのですが…。



麻木

今回はユーザーが全員、子供ですね(笑)。

若林

そうなのです(笑)。実際のところ、最初に試験導入を行った時には、本来の認識率よりもかなり低い結果になりました。驚いてデータを分析してみると、なんと静脈パターンが正しく登録されていなかったのです。単に認証時のスキャンがうまくいかないのなら、手のひらの角度を変えたり動かしてもらったりすれば済みます。しかしマッチングに使用する大元のデータが、正しく登録されていないのではどうしようもありません。

もちろん、データ登録の際には「じっとして手のひらを広げて」と言ってあるわけですが、特に低学年の遊びたい盛りの子供たちには、ちょっと難しかったようです。また最初にデータの読み取りに使用したハンドガイドが大人用だったため、ちゃんと手が固定されないという問題もありました。その結果、手をすぼめていたり、斜めになったりしたデータが登録されていたというわけです。

 



阿部

どうすれば子供たちのデータを正しく登録できるのか、我々も現地スタッフもかなり悩みました。その結果考え出したのが、「Be A Star(お星様になろう)」というポスターです。手のひらを広げると星の形になりますから、この通りに手を置いてねと訴えたわけです。これなら子供たちも直感的に理解できます。またハンドガイドについても子供用に再設計したものを利用し、ようやく本来の認識率を実現することができました。



麻木

それは大変!でもこれで、子供向けシステムのコツを掴みましたね(笑)。ちなみに、子供は年々成長しますが、静脈のパターンは変わらないのですか。



若林

よほど小さなお子さんだと再登録ということもあり得ますが、一般的には小学校中学年くらいの年齢になると、パターンは固まってしまいます。成長してもパターンは同じですので、読み取った画像を縮小すればマッチングできます。





新システムは、
どのようなメリットをもたらしたのでしょうか。


若林 晃 富士通 株式会社  ビジネスインキュベーション本部 開発部(バイオメトリクス認証担当)

麻木

システムを導入した成果はいかがでしたか。



阿部

2006年9月から本稼働を開始しましたが、おかげさまで大変好評です。プレス向けの発表には、スコットランド政府のNico Stephen副主席大臣から「新しいキャッシュレス決済システムが導入されたことで、給食費の補助を受けている子供たちが、そのことを気にしたり恥ずかしがったりしなくて済むようになった。これは子供たちにとって大変素晴らしいことであり、政府としても大いに感謝している」とのコメントを頂きました。

これは構築に携わった我々にとっても、非常にうれしいことです。トッドホーム小学校にも、他の学校から見学の申し込みがたくさん来ているそうですよ。



麻木

スコットランドの学校教育に貢献したことが、高く評価されたというわけですね。

阿部

新システムは子供たちにも好評でした。手をかざすだけで認証や支払いができるなんて、まるで映画に出てくる未来の技術のようだと感じているようです。給食時間が来る度に、スパイ映画の主人公になった気分が味わえると大人気です(笑)。



麻木

それは面白い!確かに子供たちにとって、こういうシステムを毎日使えるのは楽しいでしょうね。今後はどのような展開を考えられていますか。

若林

他の学校への展開に加えて、給食以外の分野でも活用できればと考えています。たとえば図書館の貸出や返却業務ですね。図書の貸出には図書カードなどを利用するケースが多いですが、手のひら静脈認証技術を使えば、もっと簡単に貸出や返却の管理が行えます。RFIDタグなどの技術と組みあわせれば、無人で貸出や返却処理を行うことも不可能ではありません。



手のひら静脈認証装置

麻木

いままで生体認証というと、セキュリティ技術というイメージが強かったのですが、他にもいろいろな利用法があるのですね。



若林

セキュリティが重要な用途であるのはもちろんです。ただこれからは、利便性を高めるための技術として使われることも多くなると思っています。手のひら静脈認証は、本人認証を必要とするシーンであれば、どんなものにも応用できますから。たとえばクルマのキー代わりに使ったり、電車の改札口で定期やカードの代わりに使ってもいいわけです。社会のあちらこちらで、もっと手のひらをかざすシーンが増えてくればいいですね。

もっとも、今回の事例もそうですが、世の中には我々には予想も付かないニーズがたくさん存在しています。そういう意味ではもっとお客様の声をしっかり聞いて、いろんな分野にこの技術を広げていきたいと思います。



麻木

手のひら静脈認証技術を活用することで、安全で便利な社会が実現していくというわけですね。本日はありがとうございました。



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