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(大都魚類株式会社、中央魚類株式会社の2社で共同開発されたシステムについて、中央魚類様をお訪ねしお話をうかがいました。)

麻木
本日は「東京の台所」としてお馴染みの築地市場に来ています。
市場の中を歩いていても非常に活気が感じられますが、中央魚類さんはここでどのような業務を行われているのですか。
大滝専務
築地市場には7社の卸売会社がありますが、当社はその1社として水産物の卸売業を手がけています。ここに集まってくる大量の魚を、仲卸業者さんなどに販売するのが我々の役目です。全国の漁港で水揚げされた鮮魚はもちろん、世界中の海で獲れた魚を取り扱っていますよ。
麻木
世界中から魚が集まってくるんですか!
大滝専務
当社は昭和21年の創業ですが、その頃の水産物は国内品だけで需給率を100%満たせました。しかし最近では、全体に占める国内品の割合は50%を少し下回るくらい。
あとはすべて外国から輸入しています。特にマグロやサーモンなどは輸入品がメインですね。

麻木
そういえばノルウェーのサーモンなどは有名ですね。
大滝専務
現地では日本人の好みに合わせて、養殖技術を向上させているようですよ。ただ、最近では健康食ブームということで、諸外国でも魚の良さが見直される傾向が強まっています。特にヨーロッパでは白身魚、アメリカではエビの人気が高く、油断していると買い付け競争に遅れを取る可能性も出てきました。
これからは魚のマーケットにおいても、グローバル競争が一段と激しさを増しそうな気配です。我々もこうした状況に対応すべく、しっかりと頑張っていきたいと思います。
麻木
水産物の世界も競争が厳しいのですね。そういえば、江東区の豊洲へ市場を移転する予定だという話を聞いたのですが、それはどういういきさつなのですか。
大滝専務
麻木さんもご覧になったように、築地は既に市場全体が手狭になっています。もともと鉄道輸送を前提として設計された場所であるため、トラック輸送が全盛の現代では使い勝手の良くない面も出てきていました。しかも築地市場ができたのは昭和10年ですから、施設・設備の老朽化も目立っています。そこで2012年に、市場を豊洲へ移転する計画が立てられました。
豊洲に建設される新しい市場では、当社としても販売・物流業務が一気通貫で流れる先進的な市場を実現していきたいと考えています。今回富士通の協力を得て「セリ現場音声認識システム」を構築したのも、そうした取り組みの一環なのです。

麻木
「築地のセリ」と聞くと、個人的には「掛け声や符丁が飛び交う中でどんどんモノが競り落とされていく」という、昔ながらのイメージが浮かびます。実際にはどのような感じなのでしょう。
大滝専務
今でも基本的には麻木さんのイメージ通りですよ。昭和の初めに市場ができた頃から、セリの形態はほとんど変わっていません。ただ業務上の課題として、伝票書きなど人手に頼る部分が多いという点がありました。
たとえばセリが始まる前には、セリ順や商品の出荷者、産地、品名、規格、数量などをまとめる「下付け」という作業を行います。またセリが始まったら、落札した業者さんに売渡表などの書類を書いて渡さなくてはいけません。こうした作業をもっと効率化できないかと考えたのが、今回のシステム導入のきっかけです。

永澤
タッチパネル式のハンディターミナルを導入して下付け作業の効率化を図るなど、現場業務のシステム化自体には以前から取り組んでいました。しかし品種が多かったりすると、タッチパネル入力を使ってもあまり作業がはかどらないなどの問題があったのです。そこで目を付けたのが人間の「声」です。音声でデータが入力できれば、作業の大幅なスピードアップが見込めます。
麻木
いちいち手で書いたり、キーボードを叩いたりしなくても、声でしゃべるだけでデータが入る!そんなことが本当にできるのですか!?
永澤
実は音声認識技術には、20年ほど前からずっと注目していたのです。
もちろん当時はまだ実用段階には達しておらず、ガラス張りの遮音室に入らないと使えないようなレベルでした。しかしこの技術が進化すれば、きっと業務に活用できるだろうと考えていました。その思いが、ようやく今回の富士通のソリューションで実現できたというわけです。
麻木
具体的にはどのような形で業務に使われているのですか。
永澤
まず分野としては、活海老の卸売場から適用を開始しました。入力端末とヘッドセットマイクを身に付けた担当者が、先ほど話があった下付けデータを、セリが始まる前に音声で入力していきます。
たとえば「出荷者A商店 特大3の2」と発話すると、「出荷者=A商店・規格=特大・個数=3・数量=2」というデータがシステムに入力されます。さらにこのデータを販売原票としてプリントアウトし、セリに参加する業者さんに配布します。セリがはじまったら、今度は落札された商品の単価や売渡先などのデータを、同様に音声で入力していきます。もちろん市場特有の符丁を使っても、問題なく入力することが可能です。
さらにこのデータは無線LANを使ってサーバに送られ、市場内に設置されたプリンタから即座に売渡表が印刷されます。このように手作業が介在する部分はまったくありません。

麻木
市場の中、特にセリの最中は騒音がすごいのではないかと思うのですが。その中でもちゃんと認識できるものなのですか。
永澤
そこがやはり一番苦労した点でしたね。セリ場自体の騒音もそうですし、外では「ターレ」と呼ばれる独特の構内運搬車も走り回っています。音声認識システムを導入する場としては、もっとも厳しい環境なのではないでしょうか。
しかし富士通が認識率を高めるためのチューニングを行うなど、しっかりと我々をサポートしてくれました。
おかげで決して静かとは言えない現場においても、問題なく認識が行えています。
麻木
今回のパートナーに富士通を選んだ決め手は何だったのですか。
永澤
いろいろなソリューションを検討したのですが、富士通のソリューションは音声認識エンジンの精度が非常に高い上に、不特定多数のユーザーが使用しても問題がない。こうした点を評価しました。他社のソリューションには「特定の登録ユーザーのみが使える」というものもあったのですが、これでは端末を人数分だけ導入しなくてはならず、コストが高額になってしまいます。
また富士通が長年にわたって、当社のシステムをしっかりと支えてくれている点もポイントとなりました。
ちなみに今回のシステムは、当社と同じ築地市場の卸売会社である大都魚類様との共同開発なのですが、大都魚類様も我々と同様富士通ユーザーです。作業を進めていく上では、この点も幸いでした。

麻木
伝統的なセリの現場に新しいシステムを導入するのは、非常に大きなチャレンジだったと思いますが。
広瀬
確かに現場サイドとしては、正直言って「音声入力など導入して大丈夫だろうか」という不安もありました。しかしその一方で、効率化を進めなければいけないという事情もよく理解していました。たとえば販売原票を記帳したり、売渡表を作ったりする作業は、とても一人ではできません。セリが終わるまでの間、5~6人の担当者が掛かりっきりになるのが普通でした。もちろんこうした伝票作成なども大事な仕事ですが、どちらかといえば単純作業的な要素が強い。この人員を営業活動などに振り向けることができれば、それだけ売上や利益の向上につながります。そういう意味では、導入を決断して本当に良かったですね。
麻木
最初は音声認識システムの実力について半信半疑だったとのことですが、今ではいかがですか。
広瀬
当初感じていたような不安は完全に解消していますね。何しろ私自身、「これからは音声入力の時代が来るぞ」と友人に自慢しているくらいです(笑)。

麻木
業務の効率化もかなり進んだのではないですか。
藤城
その通りです。先ほども以前は作業に5~6人の人員が必要だったという話が出ましたが、今では下付けもセリ中のデータ入力も、担当者が一人いればそれで済みます。今までのことを思えば、これだけ作業が簡略化できたのは画期的ですね。
また時間的な短縮効果も大きい。手書きの時代は販売原票や相場表を作ったり、配布用のコピーを作成したりする作業に、2人掛かりで約1時間程度必要でした。それが今では担当者1人、約15分で完了できますから。
麻木
2人で1時間掛かっていた作業が、1人で15分ですか!それはすごい!
藤城
築地市場全体で見ると、活海老だけで一日あたり2~2.5トンもの商品が取引されています。これだけ膨大な物量を取り扱う以上、いつまでも人手と時間を掛けて処理していたのでは、とてもスピーディーな業務は期待できません。特に豊洲の新市場では物流も含めた全体最適化を目指しますので、データ入力が現場で完結できるようになった意義は非常に大きいです。

麻木
今回は活海老の卸売とのことでしたが、それだけ効果が大きいとなると、今後は他の業務にも広げて行かれるのでは。
大滝専務
市場ではセリ以外に、売り手と買い手が一対一で商談を行う「相対販売」も行われています。現在、この相対販売についても、音声認識システムのテストを始めています。その結果も良好ですので、どんどん適用分野を広げていく予定です。
永澤
相対販売とセリとは要件が異なる部分がありますので、システム的にも若干変更を加えています。たとえば相対販売ではセリほどのレスポンスの速さは要求されませんので、もっと小型の携帯情報端末を採用しています。
また相対販売は売場の場所が定期的に変わるため、セリのようにプリンタを固定的に設置して無線LANでデータを送るという手法が使えません。そこで担当者が小型のプリンタを腰に下げて持ち歩き、そこにデータをBluetoothで飛ばすようにしています。
麻木
いろいろなシステム環境が整ってくると、豊洲への移転がますます楽しみですね。
大滝専務
冒頭にも申し上げた通り、豊洲では時代の最先端をゆく販売・物流環境を目指したいと考えています。そのためには、今のうちにしっかりとした準備をしておく必要がある。今回の音声認識システムは、まさにその第一歩なのです。今後は他の卸売会社様とも協調を図り、一緒に市場を盛り上げていきたいと思います。
麻木
長年の伝統とITが融合することで、新しい時代の市場が生まれるというわけですね。
本日はどうもありがとうございました。
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