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今井
人間はもともと森に住んでいたのに、産業革命以来、都市生活というアンバランスな環境に置かれているので、都会にいるだけでストレスを受けるのです。人間は元来、生理的に森を受け入れるように作られた動物なのですね。現代人は木のあるところで生活している人は少ない。ですから、檜の香りをかがせても、イヤだという人がたくさんいます。しかし、そういう人でも、測定すると快適性が上がっているのです。つまり、生理反応と後天的に身に付けたものの指標とは違うのです。
黒川
木を残す、森を残す、特に熱帯で残すことを非常に大切と考えていまして、富士通としてもタイやベトナムなど東南アジアを中心に植林活動を1997年から続けています。この活動は「地球に優しい」というレベルに止まらず、自分や子どもたちにとっても大事なことなのだということなのです。その意味でも、地球環境保護は自分に引き寄せて考えることが大切だと思います。私は、せいぜい1泊くらいで山へ行くのですが、ゴミはすべて持ち帰ります。そういう一つひとつの行動が重要ですね。自然の中で、環境を大事にすることを若い人たちに躾ていくことがいいのかもしれません。


今井
人間が本能的、生理的に動物である以上、自分に引き寄せて組み立てると、色々なスキームができます。人間は動物だから、他の動物や植物の生命を奪って生きていく本能、つまり略奪欲求が本性的にあるわけです。ですから例えば、植林にしても、いきなり、植林から始めるのは間違いだと私は思っています。まず、森にある木を切るところから始める。略奪の本性を発揮できますから、ある意味楽しいのです。しかし大人であれば、木を切れば原野になってしまうから、「木を植えなくてはいけない」という自分たちの学んできた文化が出てきます。そこで植林すると、自分たちで植えた木だから大切にして、成長する様子を見守るようになる。人間にとって植林の本当の意味が自己確認できる。子ども達はそれが分かっていないと思っていたのですが、最近はよく教育されていて、木は切ったら植えなければいけないということが分かっていますね。私たちは今、文明社会にどっぷりつかって生きていますが、自分たちの脳の中にはまだ動物の部分をたくさん持っています。ですから、その部分をまず、生かしてやる方法を作らないといけないと考えています。
黒川
それが、本来の意味で自然を“守る”ことにつながるのでしょうね。今日はありがとうございました。
趣味が登山とはいえ企業経営者である黒川社長と医師/登山家の今井氏の“共通項”は、見えにくい。しかし、二人の対談は冒頭から小気味よく展開した。挑む、診る、守るという3つのキーワードで重なる部分がある一方で、リーダーとしての試行錯誤、プロジェクトのあり方、若い人の育て方、ITの役割など具体的なことで、二人の立場の違いから見えてくる視点の差が逆に新鮮な刺激となったからではなかろうか。二人の対談を通じて、富士通という企業が、単なるIT大手企業ではなく、広く社会に貢献する企業であることが改めて浮き彫りにされた。そして、富士通の企業理念であるThe FUJITSU Wayに見事に重なってくる。
全体を共有するコミュニケーションが メンバーの喜びを保障する
木を切るところから始め 動植物の命を奪って生きる人間の姿を直視する