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開発プロジェクトと登山隊の リーダーシップの違い

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開発プロジェクトと登山隊の リーダーシップの違い

富士通株式会社 代表取締役社長 黒川 博昭

黒川

私は会社に入って、システムエンジニア(SE)として長年システム開発プロジェクトをやってきました。こうしたプロジェクトは目的が明確で、期間やリソース(人員)も決められていて、リーダーが全責任を持って遂行します。ただ当時、プロジェクトといっても、皆、よく分からないので、新田次郎さんの小説『八甲田山死の彷徨』を読んで、弘前隊と青森隊を比較して、リーダーとは何かを考えてみろと部下によく言っていました。この小説から、プロジェクトでのリーダーのあり方が学べるからです。今井さんは80年代には隊を率いて、チョモランマ(エベレスト)に登攀されたわけですが、そこで考えていたことや自分の楽しみをどこに見いだしていたのかについてお聞かせください。



今井

まずマッターホルンに行ったのをきっかけに、自分と自然の関わりを3つに分けて考えることにしました。1つ目は自分の限界への挑戦。チャレンジングな山登りはこれです。2つ目は日本人が健康のためのアウトドアを楽しめるようにすること。そして3つ目が近くの山に家族や友人と楽しみに行くこと。箱根の金時山に金時茶屋というのがあり、そこに金時娘として親しまれている小宮山さんという女性がいます。小宮山さんは、1932年生まれで13歳の時からその茶屋で働いているのですが、金時山に登るのは、富士山を見に行くのと、小宮山さんに会いに行くためなのです。そんな形で、自分の山登りを分けました。



黒川

リーダーシップという面ではどうでしょうか。

医師 登山家 今井 通子氏


今井

1979年のヒマラヤは自分が隊長で登ったのですが、そこで分かったことは、自分がひとつ物事を決めたら、その後は相当よいアイデアでない限り、変更してはいけないということでした。ひとつ決めると、関連する人間はその路線の下で動くわけです。何週間もかけて決めて、コミュニケーションを取りながらやっていくのに、「こっちの方がよいかな」と変えてしまうと、皆それに振り回される。自分としては最初の頃は気づかずにやっていたのですが、時間変更など非常に簡単なことでも大きな影響を与えるということが分かりました。



登山隊は皆、山に登りたくて来ているので、目的は同じです。ですから、リーダーシップといっても、企業と比べると楽な面がありますね。加えて、企業など一般社会のリーダーシップはチームワークといいながら、自分で必死に努力して、相手を蹴落とさないとトップには行けない。しかし、登山隊は最初からリーダーは決まっていて、山に登りたいという人が集まってくる。

かつての登山隊は何十人かの隊員がいて、縁の下の力持ちが段々と段取りをしていって、実際に山頂に立てるのは2〜3人というのが常識でした。私は同じお金を払い、同じ苦労をした人たちをそんな形で選別できないと考え、隊員全員が山頂に立つタクティクスを組みました。ですから、ダウラギリ登山隊では、19人の隊員しかいないのに、荷揚げとかサポート役などで延べ59人が登頂しました。その意味で、縦型社会でなくて、横並び、つまり「横型社会」でやろうとしたのです。

1969年アイガー北壁にて。スイスアルプスを代表する標高3970mの山。北壁はアルプス三大北壁の中で最も困難とされる。




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